あなたの知らない中国語!

「あなたの知らない中国語!」の公式ブログです。毎週Podcast、Google Podcast、Spotify、Anchorとこのブログで配信しております。ご質問・ご意見はそれぞれのエピソードのコメント欄へお願い致します。

通常版第56話 三十六計1/三十六计1

あなたの知らない中国語!

 

通常版第56話 三十六計1/三十六计1

の配信がスタートしました!

原稿は一番下に掲載しております。

 

ご視聴は下記のリンクをクリックしてください!

または各Podcastのアプリで「あなたの知らない中国語」と検索してください。

Apple Podcast:https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AE%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E/id1528116819

 

Google Podcasts

https://podcasts.google.com/feed/aHR0cHM6Ly9hbmNob3IuZm0vcy8yZmNjYzQxYy9wb2RjYXN0L3Jzcw==

 

Spotify

open.spotify.com

 

Anchor:

anchor.fm

 

またこの番組ではご質問を募集しております。頂いたご質問は毎回番組の最後の質問コーナーでご紹介することがあります。

どうぞこの記事のコメント欄にて中国語や中国文化についてのご質問をどしどしご投稿くださいませ!

欢迎您提出各种问题!

 

通常版第56話 通常版第56話 三十六計1/三十六计1

原稿

 

今日の本文

大家好!中国人非常喜欢计策。无论是写下≪孙子兵法≫的孙武,还是三国志里的头号谋士诸葛亮,数千年的历史中各路智将的故事常常成为茶余饭后的话题。而中国历史上最有名的一条计策我想当属“三十六计,走为上计”了。

 

こんにちは!中国人は計略が大好きです。『孫子の兵法』を書いた孫武や、三国志の中で一番の頭脳を誇る諸葛亮孔明など、数千年の歴史の中で出てきた沢山の智将たちの物語はよくお茶の間の話題になります。そんな中国の歴史の中で一番有名な計略と言えば、「三十六計、逃げるに如かず」ではないでしょうか。

 

这个计策来自于一本名叫≪三十六计≫的兵法书。这本书的名称源自公元400年前后的南北朝,但具体成书的时期已经无法考证。≪三十六计≫中共收录了三十六条中国人人人皆知的策略。这本浓缩了古代中国的战略思维和大量战争经验的兵法书是中国历史悠久的非物质文化遗产之一。

 

この計略は『三十六計』という兵法書に由来します。「三十六計」という言葉は紀元400年前後の南北朝時代に初めて使われましたが、この本自体がいつ書かれたかについては未だに検証できずにいます。『三十六計』の中に中国人なら誰でも知っている三十六条の計略を収録しています。この本は古代中国での戦略的思考と大量の戦争経験を凝縮したもので、長い歴史を持つ無形文化財と言われています。

 

≪三十六计≫共分六个部分。根据我方的优势从大到小分为“胜战计”、“敌战计”、“攻战计”、“混战计”、“并战计”和“败战计”。每个部分都有六个计策。今天我们就来介绍一下我方拥有巨大优势时的“胜战记”的前两个策略以及它们在现代汉语中的用法。

 

『三十六計』は六つの系統に分れています。我が軍が極めて有利な状況から極めて不利な状況まで順に「勝戦計」、「敵戦計」、「攻戦計」、「混戦計」、「併戦計」、「敗戦計」となっています。各系統にそれぞれ六つの計略が紹介されています。今日は我が軍が極めて有利な状況である時の「勝戦計」の最初の二つの計略についてお話します。また現代中国語での使い方にも触れます。

 

第一计:瞒天过海。意思是用谎言和伪装来隐藏自己真正的目的,等对方放松警惕之后自己的目的就容易达成了。使用了这个计策的著名的故事发生在东汉年间,名将太史慈前去救援被敌军围困在都昌城里的孔融,不曾想到自己也被一起困在了城里。想要突破包围,唯有向外求援兵这一条路。可是敌军的包围很严,出了城门外面就是敌军的阵营。

 

第一計、瞞天過海。天を瞞(あざむ)きて海を過(わた)る。これは、嘘や偽装で自分の本当の目的を隠し、相手を油断させてから目的を達成するという計略です。この計略を使った有名な物語は後漢の時代に起きました。敵軍に囲まれていた孔融が、都昌という町で籠城します。それを助けに行くのが名将太史慈ですが、彼自身も城内に閉じ込められてしまいます。包囲網を突破するには外から援軍を呼んでくるほかありません。しかし敵の包囲が厳重で、城門のすぐ外に敵軍が陣営を築いていました。

 

太史慈想到一计,他命两名随从带上箭靶,自己则带上弓箭骑上马,三人光明正大地走出城门。城外的敌军十分惊讶,以为他们要突围,便纷纷做好战斗准备。可是太史慈却只是在城门前练习射箭,练习完毕后带着随从返回了城内。

 

そこで太史慈が一計を案じます。彼は使用人二名に矢を持たせ、自分は弓を背負って、三人で堂々と城門から出てきます。城外の敵は驚きます。包囲網を突破してくるじゃないかと思い、敵は急いで戦闘準備をし、出陣をします。しかし太史慈たちは城門の前で矢を射る練習をするだけでした。練習が終わったら使用人と一緒に城内へと帰っていきました。

 

之后太史慈每天重复做同样的事,早上出城门练习射箭,练完回城。久而久之,敌军也就习惯了,看到太史慈出城门也没有人准备防范了。这一切当然被太史慈看在眼里。有一天,太史慈出了城门之后就快马加鞭,直接突围成功,等敌军反应过来的时候已经来不及了。最终他请来了刘备的援军,为孔融解了围。

 

その後太史慈は毎日同じことを繰り返します。朝城門を出て弓の練習をし、終わったら城内に帰ります。日が経つにつれ、敵もすっかり慣れてきました。やがて太史慈が城門から出て来ても警戒をしなくなりました。それを見て、ある日太史慈は城門を出るや否や突然馬を飛ばし、包囲網を突破します。敵が気付いた時は既に遅かったです。最終的に太史慈劉備から援軍を呼び、孔融を助けることができました。

 

瞒天过海的原文是这么写的:备周则易怠,常见则不疑。阴在阳之内,不在阳之对。太阳,太阴。这段话的意思是,准备的越周全人就越容易懈怠,越是经常看见的东西就越不容易怀疑。阴不存在于阳的反面,而是存在于阳的里面。越是看上去堂堂正正没有问题的事情,背后往往隐藏着巨大的阴谋。可以说太史慈的计策完美地体现了瞒天过海的精髓,堪称妙计!

 

「瞞天過海」の原文はこのようになっています。「備え周(あまね)ければ則ち意怠(おこた)り、常に見れば則ち疑わず。陰は陽の内に在りて、陽の対には在らず。太陽、太陰なり。」人間は用意周到であればあるほど怠りやすく、よく見かけるものほど疑わなくなります。陰は陽の対極にあるのではなく、陽の中に存在しています。堂々としていて悪いことなんて全くないように見えるものの中には、大いなる陰謀が潜んでいるものである、という意味です。太史慈の策はこの計略を完璧に体現していると言えます。妙案ですね!

 

而在现代汉语中,瞒天过海的意思变得更简单了。只要是隐藏真相,或是隐藏真正的目的的行为都可以被叫做瞒天过海。比如“毒贩子把毒品藏在体内,妄图瞒天过海,顺利通过海关的检查”。

 

一方現代中国語において、「瞞天過海」の意味が簡略化されました。真相を隠したり、本当の目的を隠したりする行為は全て「瞞天過海」と言えます。例えばこんな文があります。「麻薬の売人たちは麻薬を体内に隠して税関の検査を潜り抜けようとします。まさに瞞天過海です。」

 

第二计:围魏救赵。这个计策来自于战国争雄中的一次战争。魏国进攻赵国,赵国节节败退。魏国一直打到了赵国首都邯郸,包围了邯郸城,要灭掉赵国。赵国不得不向同盟国齐国求救。

 

第二計、「囲魏救趙」。魏を囲んで趙を救う。この策は戦国時代の乱世でのある戦いに由来します。魏の国が趙の国を攻め、趙の国が連戦連敗します。やがて魏の国は趙の国の首都である邯鄲ま進軍し、邯鄲城を包囲して趙の国を滅ぼそうとします。仕方なく趙の国は斉の国に救援を求めます。

 

齐国虽然出兵援救,但是却不直接去邯郸解围,而是转而进攻魏国的首都大梁。自家后院着火,魏军不得不从邯郸撤退,急着返回本国保卫自己的首都。于是齐国和赵国正好两面夹击,大败魏军。就这样齐国既轻松解救了赵国,又很有效率地打击了魏国,堪称妙计!

 

斉の国は派兵しましたが、直接邯鄲に援軍を送るのではなく、逆に魏の国の首都大梁を攻めます。裏庭が火事になった魏の国は仕方なく邯鄲から撤退し、急いで自分の首都を守ろうと引き返します。斉の国と趙の国がそこを挟み撃ちし、魏軍を大敗させました。このように、斉の国は楽々と趙の国を助け、同時に効率的に魏の国に打撃を与えることができました。まさに妙案です!

 

围魏救赵这个计策的原文是“共敌不如分敌,敌阳不如敌阴。”不过从实际采用了这个计策的历史故事来看,这个计策常常单纯地指通过进攻敌人的后方或大本营来逼其撤兵。所以现在一般的生活中很少有使用这个成语的机会。

 

この「囲魏救趙」という策の原文は「敵を共するは敵を分かつに如かず。敵の陽なるは敵の陰なるに如かず」となっています。これは、敵を集中させるよりも、敵を分散させるよう仕向けた方が良い。敵の正面から攻撃するよりも、敵の隠れた弱点を攻撃した方が良い、という意味です。ただこの策を取った歴史上の実際の戦いを見ると、単純に敵の後方や本陣を攻めることで撤退を迫る策のように思います。故に現在の生活においてこの四字熟語を使う機会はあまりありません。

 

今日の単語とフレーズ

1.茶余饭后

意味は暇な時、時間のある時です。この言い回しは直訳すると「ご飯を食べ終わって、お茶も大分飲んだ時」になります。故に日本語で言うところの「お茶の間」に近い意味があります。もっと正確に言うと、「ご飯を食べ終わって、家族や知り合いでだべっている時のお茶の間」かもしれません。「茶余饭后的话题」という使い方がもっとも多いです。書き言葉よりです。

例文:最近数字人民币成了老百姓茶余饭后的话题。

訳文:最近デジタル人民元が中国人のお茶の間の話題になっています。

 

2.光明正大

意味は堂々と、です。「光明正大地〇〇をする」というように使います。例えば「堂々とカンニングをする」は「光明正大地作弊」と言います。また日本語と同じように、中国語でも「堂々と」と「正々堂々と」は違う意味の言葉です。中国語の正々堂々は「堂堂正正」と言います。間違いやすいのでご注意ください。

例文:“你要是真有道理应该光明正大地来和我辩论,可你却在背后搞这种小动作,真是个小人!”

訳文:「あなたの方が筋が通っているなら堂々と議論してくればいいのに、何故後ろでこそこそ動き回るのですか?この小物!」

 

3.久而久之

意味は時間が経つにつれて、そうこうしているうちにだんだんと、です。そのまま使います。例えば「時間が経つにつれて、ここを上海と呼ぶようになった」は「久而久之,人们就开始把这儿叫做上海」と言うことができます。

例文:“明明是他自己有问题,却拼命隐藏,这算什么事儿!”“他的目的就是久而久之,不了了之。”

訳文:「彼自身に問題があるのに、一生懸命隠している。本当どういうこと?」「時間が経てば何事もなくなる、忘れられる、というのが彼の目的だね。」

 

4.后院着火

直訳すると「裏庭に火事」になります。意味は二つあります。一つは自分の組織に内乱が起きたことを指しますが、現代では家庭内部のトラブルを表すことが多いです。例えば夫婦喧嘩も「后院着火」と言えます。もう一つは本文にあるように、自分の本拠地や兵糧の基地、または後方の物資を輸送するルートなどが攻撃を受けることを指します。

例文:“老王的脸怎么了?他本人说是摔的,我看不像啊。”“嘘,小声点,他家后院着火啦。”

訳文:「王さんの顔あれどうしたの?転んだって本人言ってるけど、違うよね。」「シー、声が大きいよ。なんか家庭内トラブルあったらしいよ。」

 

その他

1.「囲魏救趙」の際、斉国の孫臏(軍師)が田忌(大将)に言った言葉。

 「夫解杂乱纠纷者不控拳,救斗者,不搏击,批亢捣虚,形格势禁,则自为解耳。」

「絡まった糸を解くときには無理に引っ張らないほうが良い。闘いから救おうとするなら直接加わってはいけない。要所を突き、虚を突いて、形勢を崩してやれば、糸はおのずから解けていくものだ。」

 

 

以上どうぞよろしくお願い致します。